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15- D- 0222
201 5 年 6 月 1 9 日
産業ガ
ス
大手各社の 15/ 3 期決算の
注目点
産業ガス大手各社(エア・ウォーター、大陽日酸の 2 社)の 15/ 3 期決算および 16/ 3 期業績予想を踏まえ、 株式会社日本格付研究所(J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整理した。
1. 業界動向
14年度のセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の国内販売数量は、ピーク時である 07年度と比べて 約16%減少している。ただ、粗鋼やエチレンなど主要ユーザー業界の生産動向に比べ、需要の分散効果やオ ンサイト供給によるユーザーとの固定的な関係などにより、長期的に見た場合の需要の落ち込みは緩和され たものとなっている。主要ユーザー業界では、足元において円安基調の定着で国内生産回帰への動きも一部 で見られるが、基本的に国内生産の縮小・停止や海外生産シフトが目立つものとなっている。そのため、中 長期的に国内産業ガスの大きな需要拡大は見込みにくく、今後は海外での事業基盤強化の重要性が一段と増 してくると考えられる。
コスト面では電力料金の上昇がリスク要因となる。産業ガスで需要が最も多いセパレートガスは空気を深 冷分離して製造されるため、極めて大きな電力を必要とする。このような事業特性上、産業ガス業界は「電 力多消費型産業」となっており、生産コストにおける電力費の割合は約 4割を占める。そのため、東日本大 震災以降、電力料金の上昇が収益の圧迫要因となっていた。ただ、足元では原油価格の下落に伴い、電力料 金の上昇についても以前に比べて一服感が出てきている。
国内業界は現在、空気分離プラントのエンジニアリング能力を有する3 社(エア・ウォーター、大陽日酸、 日本エア・リキード)に集約されている。独占禁止法の問題などから、今後は国内大手同士の合併や買収な どによるさらなる再編は想定しにくい。また、これまでは産業ガス業界内に限定した再編の動きであったが、 14 年 10 月に三菱ケミカルホールディングス(MC HC )が大陽日酸に対して T OB を実施し、同社を連結子会 社化した。MC HC と大陽日酸は旧大陽東洋酸素の頃から三菱化学の国内主要拠点におけるガス供給などを通 じ、近い関係にあった。今回の連結子会社化の実現は、MC HC にとっては事業基盤の拡充と収益安定性の向 上、大陽日酸にとっては財務基盤の安定と成長分野・市場などでの連携強化などにつながることが背景にあ る。
2. 決算動向
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2社合計の有利子負債はM&A を含めた積極的な成長戦略投資の実施により、12/ 3期末以降は増加傾向に あったが、15/ 3期末は横ばいにとどまった。これは大型 M&A の実施がなかったこともあるが、キャッシュ フロー創出力の向上によるところが大きい。一方、利益蓄積による利益剰余金の増加や円安による為替換算 調整勘定の良化などにより、自己資本は増加基調にある。15/ 3 期末の 2 社合計自己資本は 5, 436 億円となっ ており、直近ボトムの 11/ 3 期末3, 502 億円から1.5 倍以上に増加した。その結果、15/ 3 期末のD/ E レシオ (2 社合計の有利子負債/ 2 社合計の自己資本)は 0. 73 倍となり、4 期連続で改善が進んだ。
3. 決算に
お
け
る
格付上の
注目点
16/ 3期の営業利益合計額は 810億円(前期比 13. 4%増)と 3期連続の増加となり、過去最高を更新する 見通しである。個社別に見ても、2 社とも過去最高益を更新する計画となっている。足元では円安による国 内製造業の操業度向上や海外生産から国内生産に切り替える動きも一部では見られ、産業ガスの需要は引き 続き堅調な推移が見込まれる。加えて、一部の電力会社では電力料金の値上げが実施されているが、電気料 金 の上 昇に つい ても 以前 に比 べ一 服し てお り、 価格 転嫁 やコ スト 削減 など によ りあ る程 度の 吸収 は可 能と J C R では考えている。また、エア・ウォーターでは非産業系事業、大陽日酸では海外ガス事業といった積極 的に取り組んでいる成長戦略の成果が、増益のけん引役となっている。エア・ウォーターは産業系(産業ガ ス、ケミカル)が 14 億円の増益(経常利益ベース)だが、非産業系(医療、エネルギー、農業・食品、そ の他)は 33 億円の増益を計画している。大陽日酸は国内ガス事業が横ばい(営業利益ベース)なのに対し、 米国ガス事業とアジアガス事業を合わせて 32 億円の増益(子会社 2 社の決算期変更影響除き)となってい る。ただ、国内の主要ユーザーが置かれている国際的な状況を考えれば、中長期的に国内産業ガス需要が漸 減していく可能性は否定できない。こうした需要の変化に対し、国内産業ガス事業については収益力強化を 図るとともに、その影響を成長戦略でカバーしていけるかが引き続き大きな注目点となる。また、大陽日酸 は MC HC の連結子会社となったことでMC HC グループとの連携強化を掲げている。海外オンサイト事業、 人工炭酸泉、新素材といった分野での新規シナジー創出を企図しており、MC HC 企業との協業が収益力の更 なる強化につながるかも注目していく。
成長戦略の実行にあたっては先行的な財務負担が生じる。このため、資金調達力を含めた財務体力や、キ ャッシュフローと投資のバランスが適正に維持されているかもポイントとなる。2 社とも対象や規模の違い はあるが継続的に M&A が実施されている。これまでのところ財務的な負担は適正な範囲に収まっており、 財務内容に大きな影響とはなっていない。16/ 3 期についても 2 社合計の設備投資額は 1, 021 億円(前期比 349 億円増)、投融資額(エア・ウォーターはM&A 投資額、大陽日酸は投融資額)は345 億円(前期比 249 億円増)となっており、積極的な投資が実施される計画である。ただし、安定したキャッシュフロー創出力 や自己資本の拡充などを踏まえれば、財務健全性が大きく損なわれる懸念は小さいと考えている。
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(図表 1)産業ガス大手 2 社の業績推移 (単位:億円、%)
売上高 前期比 営業利益 前期比 経常利益 前期比 当期純利益 前期比
エア・ウォーター 14/ 3 期 6, 413 +18. 7 351 +25. 7 363 +3. 2 192 +4. 7
(4088) 15/ 3 期 6, 605 +3. 0 361 +3. 0 382 +5. 2 207 +7. 7
16/ 3 期予 7, 000 +6. 0 400 +10. 7 420 +10. 1 230 +11. 1
大陽日酸 14/ 3 期 5, 227 +11. 6 315 +26. 5 305 +32. 5 202 −
(4091) 15/ 3 期 5, 594 +7. 0 353 +12. 1 343 +12. 2 208 +2. 8
16/ 3 期予 6, 500 +16. 2 410 +16. 2 393 +14. 6 240 +15. 6
2 社合計
14/ 3 期 11, 640 +15. 4 666 +26. 1 668 +14. 8 394 +241. 9
15/ 3 期 12, 199 +4. 8 714 +7. 3 724 +8. 4 415 +5. 2
16/ 3 期予 13, 500 +10. 7 810 +13. 4 813 +12. 2 470 +13. 3
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
(図表2)産業ガス大手 2 社の財務推移 (単位:億円、倍、%)
有利子負債 自己資本 自己資本比率 D/ E レシオ
営業 キャッシュフロー
投資 キャッシュフロー
エア・ウォーター 13/ 3 期 1, 211 1, 856 38. 3 0. 65 301 - 425
(4088) 14/ 3 期 1, 374 2, 036 38. 6 0. 67 482 - 522
15/ 3 期 1, 362 2, 264 41. 3 0. 60 511 - 355
大陽日酸 13/ 3 期 2, 459 2, 038 33. 1 1. 21 340 - 372
(4091) 14/ 3 期 2, 564 2, 743 37. 5 0. 93 567 - 553
15/ 3 期 2, 597 3, 172 40. 5 0. 82 586 - 306
13/ 3 期 3, 669 3, 894 35. 4 0. 94 640 - 797
2 社合計 14/ 3 期 3, 938 4, 779 37. 9 0. 82 1, 050 - 1, 075
15/ 3 期 3, 959 5, 436 40. 9 0. 73 1, 097 - 661
(出所:各社決算資料より J C R 作成)
※ 有利子負債は借入金、社債の合計。D/ E レシオは(借入金+社債)/ 自己資本にて計算。
【参考】
発行体:エア・ウォーター株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:大陽日酸株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
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